騙されたと思って試してみる価値はあります
数々の安眠対策を試しながら、そのついでくらいの感覚で試してみたいのが、暗示とおまじないです。
自己催眠的な要素を用いて眠りに導くという手法なので、なにより元手がかかりません。効果がなくても損するわけではないというのが大きなメリット。効果は個人差が大きいので、効かない人には全く効きませんが、効けばラッキーくらいに思ってチャレンジしてみましょう。
85:ヒツジを数えても無駄
眠れないときに布団の中で「羊が一匹、羊が二匹…」と羊の数を数えればいつの間にかぐっすりと…という話はよく聞きますが、実際に試して眠られる人は非常に少ないのではないのでしょうか。
それもそのはず。この呪文のような眠り方は日本語では何の効果もありません。
英語でsheep (羊) と sleep (眠る) の発音が似ているので、何度も唱えているうちに自己暗示にかかり眠くなるという理屈が有名ですが、どちらにしても試す価値はなさそうです。
86:数えるならフィボナッチ数列
では、羊の代わりに何を数えれば眠られるのか、という話ですが、オススメしたいのがフィボナッチ数列です。
フィボナッチ数(Fibonacci number)はイタリアの数学者レオナルド・フィボナッチにちなんで名付けられた数のことで、隣り合う2つの数を加えると、次の数に等しくなる、という規則をもった数列です。
最初は0から始めます。
0+1=1
1+1=2
1+2=3
2+3=5
3+5=8……
というように、足し算の和とその直前の数字を足していきます。
数字だけを並べて行くと、0、1、1、2、3、5、8、13、21、34……となります。
暗算が苦手で…という人なら、数字を逆に数えて行くだけでも充分です。100、99、98、97……と100から順に数えていきましょう。
87:手のひらを使ったおまじない
簡単な安眠のおまじないに手のひらを使ったものがありますので、紹介しましょう。
布団の中で瞼を閉じたら、手のひらの付け根のあたりを眉間に押し当てて、ぐる~っと円を描くように揉みます。
ゆっくりとマッサージするようにしてやれば、じわじわと身体もほぐれて寝付きがよくなるのです。
88:自律訓練法とは
ドイツの精神科医シュルツ(Schultz,J.H.)によって創始された自律訓練法をご存じでしょうか。
自律訓練法とは一定期間の練習を必要とし、交感神経の緊張を解きほぐしてリラックスする自己催眠法です。
疲れをとり、神経を休める効果から不眠の治療にも使われます。
自律訓練法は6つの公式で成立するもので、そのすべてを実行しますが、最初のうちは第1と第2公式のみで充分です。またそれぞれの公式に禁忌症がありますので、禁忌症に該当する場合は実行してはいけません。
すべての自律訓練法に共通する禁忌症は、心臓病、糖尿病、心筋梗塞、低血糖、精神病、呼吸器疾患、消化器疾患などです。
89:自律訓練法 公式1~2を試す
自律訓練法の前提として、静かな場所で行うこと、ゆったりとした恰好で行うこと、空腹時や満腹時を避けることが必須です。
リラックスした正しい環境で行わないと却って自律神経が乱れるおそれがあります。
また1回あたりの実施時間は最大5分間。1日に2~4回の実施にとどめ、かつ毎日継続することが大事です。2~3カ月で効果が現れますが、個人差が大きく、即日で効果を実感する人もいれば、いくらやっても効果がない人もいます。
まずは第1公式を実施します。第1公式の禁忌症は肩こりです。肩が凝りやすい人は飛ばして第2公式へ進みます。
リラックスして力を抜き、目を閉じ、腹式呼吸を行います。深呼吸をしてから、背景公式を心の中でゆっくり唱えます。
背景公式は「気持ちがとても落ち着いている」です。
そして、第1公式を心の中で唱えます。「右腕が重い」です。左利きの人は「左腕が重い」を唱えます。
そして右腕が重くなっていく感覚を自分で作りだすのです。
次いで、逆の腕、右足、左足がそれぞれ重いと唱えます。
さらに第2公式を実施します。第2公式の禁忌症は皮膚掻痒症です。
唱える言葉は「右腕が温かい」。
第1公式同様に左腕、右足、左足もそれぞれ温かいと唱えます。
ここまでずっと目は閉じたままです。
最後に消去動作を行います。これを怠ると不快感や脱力感などが起こることがありますが、そのまま就寝する場合は実施する必要はありません。消去動作は、足の屈伸を数回行い、背伸びと深呼吸を行なってから目を開けます。
自律訓練法は効くんだという気持ちで取り組むことが大事です。あくまでも自律訓練法は自己暗示なので、体調が良いイメージを想像してやりましょう。
90:自律訓練法 公式3~5を試す
第1公式と第2公式をしばらく実施して、スムースにできるようになれば、第3公式以降も実施するとよいでしょう。
第3公式は「心臓が静かに打っている」です。禁忌症は心臓疾患、循環器疾患になります。
第4公式は「呼吸が楽になっている」、第5公式は「おなかが温かい」、第6公式は「額が涼しい」。
禁忌症は第6公式で、頭痛、偏頭痛、脳に既往症がある場合です。
これら一連の流れを2~3分で行い、最後に消去動作をして終わります。
91:筋弛緩法を試す
寝付きが悪い上に、深く寝た感覚が得られない場合、睡眠中に深く睡眠できずに何度も覚醒してしまい睡眠が細切れになっている場合が多くあります。
そんな状況に悩んでいるなら実践したいのが、筋弛緩法です。筋弛緩法は緊張した筋肉を緩めてリラックスすることで、自律神経を整える治療法です。
一般的に自律神経失調症やパニック障害などの緊張緩和に用いられる手法ですが、普段の生活にも応用が効くためアスリートや演者が平常心維持のために使うこともよくあります。
筋弛緩法のやりかたはいたって簡単。
まずは椅子に腰かけて、両手を太ももの上に置きます。
次いで両手のこぶしをギュッと力を入れて5秒間握ります。5秒経ったら、一気に力を抜いて15秒間だら~んとします。
これを2~3回繰り返すだけです。
力をギュッと入れた緊張状態とだら~んとした弛緩状態のメリハリを、きっちり意識として把握するのがコツです。
余裕があるなら、両手のこぶしをギュッと握って腋もギュッと締め、胸にこぶしをギューッと押しつけながら肩を上げます。そして5秒キープ後に一気に力を抜く手法も試しましょう。このとき、腹筋や背筋にも力を入れるのがポイントです。