心理的ストレスは不眠を誘発します
2日や3日寝付きが悪いとか眠られない夜が続いたという程度なら、心配には及びませんが、これが何日も続くと不眠症を疑ってみる必要がでてきます。
不眠症にはさまざまな原因が考えられますが、そのなかでも心理的要因から引き起こされる不眠症について対策を考えてみましょう。
81:悲しくて眠れない場合
失恋や死などで大切な人を失った悲しみは一朝一夕に消えるものではありません。
いわば一種のショック状態に陥っているわけで、ゆっくりと身体を休めようにも、脳がそれどころじゃなくなっているのです。
悲しみは時間が癒してくれるとよく言われるとおり、一定期間が過ぎれば心身も落ち着いてきて、眠りにつきやすくなります。
ただし、しばらく日数が流れても全く変わらないようであれば、人の助けを借りることも考えましょう。
具体的にはカウンセリングを受けてみるという手段があります。自分の心の奥底にある悲しみを専門家に吐露することで、気持ちが落ち着くだけでなく、第三者からの思いもしなかったアドバイスを得ることで、状況の好転を狙うことができます。
82:不安で眠れない場合
大事な試験や商談など気になって不安に陥ることは誰にでもあること。いわゆる緊張状態が継続しているため眠れなくなるわけです。
また漠然とした不安感から眠れなくなることもあります。
ストレスは社会生活につきものですが、少しでも和らげる努力をしましょう。具体的にはリラックスすることです。
リラックスは、対策14~18で挙げられている入浴法、対策44~47のアロマテラピー、対策54のヒーリングミュージックなどを実践してみるといいかもしれません。
数週間試しても変化が現れない場合は心療内科などの専門医に相談してみてください。
83:イライラして眠れない場合
仕事が上手く行かない、人間関係で苦労するなどなど人生はイライラの連続です。
イライラはストレスになるので、先述の不安で眠れない場合と同様に睡眠障害の原因になってしまいます。
やはりここはリラックスしたり、運動で発散したりしてイライラを忘れることが重要です。
数週間しても症状が改善しない場合は、専門医を頼ってみましょう。
また、女性の場合はホルモンバランスの崩れがイライラを増長させることも。ただ、これは周期的なものなので、時期が過ぎればイライラも落ち着くことから、それほど心配する必要はありません。
84:うつ病で眠れない場合
うつ病は気分障害の一種。気分が抑鬱されて不安感や焦燥感に襲われるもので、不眠症の原因でもあります。
うつ病から不眠になるメカニズムはいくつかあります。
なかでもセロトニン(serotonin)やノルアドレナリンなどの脳内の神経伝達物質の働きが悪くなっていることが大きな要因のひとつ。
セロトニンとは必須アミノ酸のトリプトファンから産生される物質ですが、セロトニン自体は食べ物から摂取することができません。
トリプトファンが含まれた食べ物を摂ることで安眠に導く対策を対策38や対策41で取り上げていますが、トリプトファンを摂取してもセロトニンに分解されなければ、何の意味もなくなってしまうわけです。
身体がセロトニンを作り出さなくなると、催眠物質であるメラトニンも作られなくなります。メラトニンも安眠のために欠かせないもの。
メラトニンが体内で分泌されると眠くなってくるのですが、メラトニンの材料となるセロトニンが生成されないので、眠気がこなくなるという理屈です。
そこで、シナプスにおけるセロトニンの再吸収に作用することで症状の改善を目指す薬SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRIなどを摂取してうつ病の是正をはかります。
ただ医師に頼りっきりで薬だけで治そうとするのではなく、自らセロトニンを増やす努力も必要。
日光に当たって体内時計をリセットすれば、そこからじわじわとセロトニンが増えるので(対策4)、早起きを心がけて、散歩などの有酸素運動をしましょう。
また食べ物をよくかんで食べるなどの、単調でリズムカルな動きを生活の中で心掛けるようにしましょう。これもセロトニンを増やす効果があります。